2018年5月19日土曜日

引用の出所の明示に©を使うことに問題がありますか?という質問について

 下記の記事のコメントで質問をいただきました。画像引用した場合、出所の明示として著作権者を表記しますが、そこに(C)©コピーライトマークを表記するのに問題はないか?という質問です。

『アニメブログの画像引用で違法と言われない著作権法のポイント』

 長くなってしまったので回答を独立記事とさせていただきました。この記事は上記の内容を前提としていますので、未読の方は合わせてお読みください。

コメントでの質問内容
現在は無方式主義なので、(c)表記はあろうがなかろうが意味はあまりないという前提ではありますが、質問です。
今の日本においては(c)表記は著作権者が自分の著作物だと表明するために付けられているように思うのですが、引用の際に引用者が勝手に(c)表記を入れてしまうと本文中にもあるように正式許諾を受けたように誤解を生むような気がします。
もともとグレーゾーンな画像の引用に別の罪(著作者名詐称罪?)が加わったりしないのでしょうか?

 まず前提として、私は引用の表示として©(C)コピーライトマークの有無はどちらでも良いという立場です。

 作品名でなく権利者名を表示する場合、アニメの場合は権利者が複雑なため、権利者自ら表示している(C)〜を記載するのが簡便であるとしています。この場合の(C)は著作権者を示すCopyrightの省略形としての意味です。

 その上で、ご心配の点についてご説明します。少し長いので下記に要点をまとめました。詳しい説明は本文をごらんください。

1:誤解が原因で『著作者名詐称罪』に問われるか?
  回答:ありえないと考えます。
2:(C)表記には正式許諾を受けたという意味があるか
  回答:(C)表示に『許諾』の意味を見出すのは難しいと考えます。
3ー1:(C)表記は誤解を誘発するのではないか?
  回答:逆に誤解を認める事になる恐れがあります。
3ー2:権利者が誤解した場合に問題はあるか?
  回答:適法な引用なら問題はないと考えます。
3ー3:読者が誤解した場合に問題はあるか?
  回答:3ー2と同様。
4:結論、それでも心配な場合は。

1:誤解が原因で『著作者名詐称罪』に問われるか?


 ありえないと考えます。

 『著作者名詐称罪』(著121条)は、権利者以外の人の名前を記載することが要件になります。つまり別人が著作権者であると詐称する罪です。ですから正しい権利者名を表示している以上は罪になりえません。

そして『正式許諾を受けたという誤解』をもって著作者名詐称罪となる可能性はありえないと考えます。『許諾』が要件になる事は条文上・判例上ともに確認できないからです。

2:(C)表記には正式許諾を受けたという意味があるか?


(C)表示に『許諾』の意味を見出すのは難しいと考えます。

 ご指摘の通り、コピーライトマーク(C)は著作権者が誰であるかを表明するために記載されています。これは慣例であると言えます。

 しかし、あくまで『著作権者が誰か』を表示しているのであって『許諾の表示』をしていると解釈するのは難しいと考えます。

 なぜならテレビや出版物で(C)の記載があるものが、すべて『引用』ではなく『許諾』であると言えるでしょうか。逆に(C)の記載のないものは『許諾されていない』と言えるでしょうか?

 実務上は『許諾』とは許諾契約ですので、契約内容によって表記の有無や方法は自由に決まります。有名なところでは『いらすとや』の画像は『ノンクレジットでの利用』が可能だとされています。またクレジット記載の場合も(C)の記入は指定されていません。あれも一種の許諾契約です。

 つまり(C)が許諾を受けたかどうかを示す目印にはなりえません。ですから、(C
)表示に『許諾』の意味を見出すのは難しいと考えます。

3ー1:(C)は誤解を誘発するのではないか?


 あえて記載を避ける事は、逆に誤解を広める事になる恐れがあると考えます。

 誤解の原因は、著作権や引用についての理解不足が原因だと感じています。著作権の誤解が広まってほしくないという考えで記事を書きました。(C)に限らず画像引用は誤解が多く、公開当時は実用的でまとまった記事が少なかったのです。

 その際に根拠のない論を広めたくはないと考えていました。(C)があってもなくても良い理由は根拠があります。しかし(C)に『許諾』の意味があるとする法的根拠はありません

 『引用の場合は(C)を記載しないでください』というのは、むしろ誤解を誘発することになると考えました。それは(C)に特別な意味を与える事になり誤解を助長すると考えたからです。

 つぎに『誤解』をするのが誰なのか?という点について説明します。以下(3-2,3)は一種の思考実験的なものです。興味がなければ4へ飛ばしてください。


3ー2:権利者が誤解した場合に問題はあるか?


 権利者が『このブログ、許諾もしてないのに(C)と表示している。けしからん!』と誤解した場合を考えます。

 権利者が訴えるとすれば『引用として著作権法上は合法だが(C)をつける事で損害があった』という民法上の損害賠償請求になるかと思います。これは実害という意味でも認められるのは難しいのではないでしょうか。

 ご質問者は画像の引用が『もともとグレーゾーン』とお考えですが、要件を満たした引用は明らかに合法です。グレーゾーンとはいえません。なぜなら著作権法におけるグレーゾーンとは権利者から訴えがあれば負ける状態(黙認)であって、正しい引用は負ける事がないからです。

 ですから適法である以上、それ以外の損害を証明しなければなりません。適法な引用で(C)がある事で受ける損害を実証できるでしょうか。

 もし、ブログで引用要件を満たさない、もちろん許諾も得ていない転載に(C)をつけていたなら、それはただの無断転載で著作権侵害です。しかし、そこに(C)の有無は全く関係ありません

 以上から権利者が(C)を許諾だと誤解したとして特に問題はないと考えます。

3ー3:読者が誤解した場合に問題はあるか?


 読者が誤解した場合困るのは、引用要件を満たさないサイトなのに(C)があるから許諾があると誤解される場合です。

 しかし前述の通り、現実には(C)の有無が許諾の目印にはなりません。法律や判例で(C)が許諾の印だと認定される見込みもありません。

 だとするならば、多くの人に著作権法上の引用について正しい知識をもってもらいたいと考えます。(C)マークに許諾の意味があるかのように黙認する事はむしろ逆効果でないでしょうか。

 もちろん適法な引用であれば、誰の権利も害していませんので、読者が『許諾』と誤解したとして実害はありません。しかし、誤解を解き多くの人が正しい認識を持つ事は、結果として権利者の擁護になると考えます。

4:結論、それでも心配な場合は。


 以上のように(C)をつける事で責任を問われる事はないと考えています。もちろん、つけるつけないは個人の責任に基づいて考える事です。

 ただ、心配な場合は『引用』の文言を記載しておけば万全ではないでしょうか?これなら『許諾』と誤解される心配はありません。

 肝心なのは著作権者が誰かがわかる事ですので、Copyrightでも著作権者でも、〜作品(作者〜)より引用、でもどれでも同じです。(C)マークを強制するつもりはなく、単に簡便な方法として紹介しています。

以上です。 スポンサーリンク